★「トントンギコギコ図工の時間」製作上映委員会の太田綾花が「花のこえ」という映画を完成させ、上映活動を展開中です。近くで上映がございます時は、ぜひ足をお運びください。           ★「トントンギコギコ図工の時間」製作上映委員会の太田綾花が「花のこえ」という映画を完成させ、上映活動を展開中です。近くで上映がございます時は、ぜひ足をお運びください。

「花のこえ」公式サイトはこちら







「自分の卒業した山の分校の映画をこれからつくるのですが、なにかアドバイスいただけませんか」
と太田綾花さんが声をかけてくれたのは、2004年はじめのことだった。そのキラキラ光る目を忘れない。いただいた名刺には手書きの丁寧な字で、武蔵野美術大学映像学部3年とある。そうするとこの人はきっと二十歳かそこらなんだ、すごいなあ。(大昔1週間ほどで卒業論文を書いたようなわたしにとって)卒業制作をつくるのに1年もかけ、しかも自分でアルバイトしてビデオテープ代や交通費の資金をつくって映画を仕上げるというから驚いた。でもほんとうにすごいなあと思ったのは、ほんの10年前、彼女自身が実際に通った小学校に再び足を運ぶということ、愛情をもって記録するということに、おおっとなったのだ。

自分が二十歳かそこらの頃は、日々一日前がいまわしくてうっとうしくて、今と一秒後がすべてだった。荒井由美が「あの日に帰りたい」とか歌っていたけど、その曲を聞くたび、わたしはカエリタクナンカナイヨと呟いていた。会いたい過去の自分なんて、どこにもいなかったのだ。

しかし綾花さんは、記憶を記録するのである。たしかに記憶の中の大切なものとの再会や再認識もあるだろう。しかしドキュメンタリーであれば、撮影していく過程で、今の母校や子どもたちの現実と向き合わざるをえない。こうじゃなかった、こんなはずじゃなかったという小石が、記憶の宝物にひびをいれる可能性があるわけだ。ちょっと母校に立ち寄ってみましたという旅人ならともかく、ああ昔とは変わってしまったという切なさだけではすまされない。で、そんなしんどいことをよくぞするものだ!
なんと潔い人だ!と思ったのだ。

それからおよそ1年半、太田綾花の初監督作品「花のこえ」が完成した。
たくさんの小石にたたかれた記憶の宝物は割れて、その割れ目が金の糸で丹念に縫い合わされている。それは山の分校をまるで知らないわたしにも、かけがえのない真実を教えてくれる映画となった。彼女がほんとうに伝えたい守るべきものは守りながら、今を生きている子どもたちと花と先生の鼓動を誠実に伝えてくれるドキュメンタリー。
この若く潔い監督がはじめて生みだした映画を、多くの人が見てくれるように、わたしも力をつくしたい。それはとても楽しく幸せなことだ。













静岡県伊豆北部、山の中の小さな分校「高原(たかはら)分校」が、廃校になる一年前を追った41分の記録映画。
卒業生である作者が、分校のあたたかな空気を描いた感動作。
<<miniDV/41分/カラー/2005>>





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